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どこからが「大きすぎ」? デシベル、リスニング量、そして時間の話

デシベル、聴く時間、WHO・ITUの規格H.870に基づく週間リスニング量の基準値をわかりやすく解説します。

「それ、音が大きすぎない?」は保護者がいちばんよく口にする質問のひとつですが、部屋の反対側から答えるのはとても難しいものです。正直な答えは「どれくらいの音量で、どれくらいの時間聴くかによる」。この記事では、その両方をわかりやすく解説します。アプリやスマホ、ニュースで目にする数字の意味がつかめるようになるはずです。

1分でわかるデシベル

音の大きさはデシベル(dB)で表します。デシベルは対数の尺度なので、ふだん使う数字と同じようには増えません。10 dB上がるごとに音のエネルギーは10倍になり、耳にはおよそ2倍の大きさに聞こえます。そして3 dB上がるごとに、聞こえ方はほとんど変わらないのに、音のエネルギーは2倍になります。

聴覚にとって大切なのは、この最後の点です。80 dBから83 dBへの変化は音量ボタンをちょっと押した程度に感じますが、内耳に届くエネルギーは2倍です。80 dBから90 dBなら10倍になります。

ヘッドフォンの場合、問題になるのは耳元での音量です。同じ音量設定でもイヤホンによって実際の音量はかなり違いますし、同じ設定なら、音圧の高い曲のほうが静かなポッドキャストより大きく聞こえます。音量スライダーのパーセンテージが大まかな目安にしかならないのはこのためです。

音量と同じくらい時間が大切な理由

内耳には、振動を神経の信号に変える、とても小さな感覚細胞(有毛細胞)があります。大きな音はこの細胞を疲れさせます。しばらくすると回復するので、コンサートのあとに耳鳴りがしたり、耳がこもった感じがしたりしても、翌日には元に戻ります。けれども、負担がくり返されたり長く続いたりすると、細胞は永久に傷ついてしまうことがあり、人間の場合は再生しません。世界保健機関(WHO)は、騒音による難聴を「元には戻らないが、予防できるもの」と説明しています。

耳が受けているのは、いわばリスニング量、つまり一定期間に受けた音のエネルギーの合計です。ほどほどの音量で長時間聴くのと、大きな音量で短時間聴くのとで、同じ量になることもあります。これが、WHOと国際電気通信連合(ITU)が共同で発表した安全なリスニングの基準、ITU-T H.870の考え方です。

週間リスニング量の基準値(H.870)

H.870は、誰にとっても安全な音量を一つに定めるものではありません。音量と聴いた時間を組み合わせて、週間リスニング量の基準値を定めています。

  • 大人:80 dBで週40時間に相当するエネルギー。
  • 子どもや音に敏感な人:75 dBで週40時間に相当するエネルギー。

計算には3 dB交換則を使います。音量が3 dB上がるごとに音のエネルギーは約2倍になり、同じリスニング量に達する時間は約半分になります。大人のプロフィールでは、80 dBで40時間、83 dBで20時間、86 dBで10時間のリスニング量はほぼ同じです。同じ時間なら、音量を下げることでリスニング量を減らせます。

これらは比較のための目安で、一人ひとりの安全を保証するものではありません。100%は週間リスニング量の基準値に達したことを示します。基準値を下回っていても、聴覚への影響がないとは限りません。音量を下げ、聴く時間を短くすることで、音への曝露を減らせます。

日常生活ではどうなる?

一度だけでも、非常に大きな音は聴覚を傷つけることがあります。騒がしい場所で気づかないうちに音量を上げてしまうことも、日常のリスクです。バスや電車、にぎやかな通りでは周りの騒音で音楽が聞こえにくくなり、それを補おうとして、気づかないうちに音量を上げてしまいます。通学や通勤、長時間のゲーム、イヤホンをつけたままの寝落ちは、リスニング量が静かにたまっていく典型的な場面です。

いま音が大きすぎるかもしれないサイン:

  • 隣にいる人に、音楽がはっきり聞こえている。
  • 腕の長さくらいの距離から、ふつうの声で話しかけても聞こえない。
  • 聴いたあとに耳鳴りがしたり、耳がこもった感じがしたりする。

リスニング量を抑えるシンプルな習慣

WHOのMake Listening Safe(安全なリスニングを)イニシアチブでは、大きな違いを生むいくつかの習慣をすすめています。

  • 音量は控えめに。特に騒がしい場所では。騒音に負けないように音量を上げたくなったら、それは休憩のタイミングです。
  • 耳にしっかり合うイヤホンを。できればノイズキャンセリング付きのものを。外の騒音がさえぎられれば、音楽を大きくしなくても聞こえます。
  • ときどき耳を休ませる。静かな時間をはさむと、耳は回復しやすくなります。
  • 大きな音の場所にいる時間を短く。コンサートなどでは、耳を守る工夫もしましょう。
  • 手元のツールを活用する。iOSにはヘッドフォンの大きな音を自動的に抑える機能があり(設定 > サウンドと触覚 > ヘッドフォンの安全性)、アプリで週間リスニング量を記録することもできます。
  • 警告サインを見逃さない。耳鳴りや聞こえにくさが1日たっても治らないときは、医師に相談しましょう。

Earbunnyでの活用

Earbunnyは耳元の音量を表示し、ヘルスケアから取得した値には「実測」、音量設定とヘッドフォンの機種から計算した値には「推定」と明記します。 アプリは週間リスニング量をH.870の基準値と比較し、50%・80%・100%に達するとお知らせします。計算方法は測定のしくみで詳しく説明しています。

聴覚が健康かどうかは、どんなアプリにもわかりません。それがわかるのは聴覚の専門家だけです。アプリにできるのは、見えないものを見えるようにすること。そうすれば「音を小さくして」は言い争いではなく、家族で共有できる数字になります。実践的なヒントは保護者ガイドもご覧ください。